Bad Assort 2025 活動記録と裏話。

時の流れは早いもので、2025年も終わりです。今年は自作品として5本というハイペースでの活動でした。企業レベルならまあわかるけど、「全部俺」状態でこのペースはさすがに疲れますね。

来年のより良い活動につなげるため、今年も活動全体を振り返ってみたいと思います。言えることも言えないことも色々ありますし、言語化はあまり得意ではないので読みづらい部分も多々あるかとは思いますが、今後の自分のため、また誰かのためになれば。

また、今年はおまけ企画として、事前に私への質問を募集しました! そちらの回答もこの場でやりたいと思います。

2025.1 サイト移転

早速ですが制作以外の話題です。もはやそんなことは誰も覚えていないかもしれませんが、サイト移転を実施、ブランド名もBad Assortに変更しました。

散らかっていた活動の軸を定めるという名目、使用しているサーバーの技術的な制約など、いくつかの要因がたまたま重なっての決断でした。実績システムやGoogleアカウント連携機能を運用できるようになりました(特に実績システムは回収を楽しんでいただいている方が多くてうれしいです!)。

サイト移転はかなり時間的リソースを食う作業で、この機会を逃すとやる機会に恵まれなかったかもしれなかったので、今思うとこのタイミングでやってよかった変更です。

ブランド名 “Bad Assort” について

決めるにあたって考えていたことは以下のような感じです;

  • 誰にでも理解できる言葉かその組み合わせであること
  • 名前が無意味な言葉にならないこと
  • いい感じに略せること(必須ではないが、カナ4文字にできるとベター)
  • 既存の何らかの名前と被らないこと(Googleで検索したときにより上位に出てくる他の名前と被らないように)
  • できれば頭文字がBであること(ブランドロゴをはじめ、既に取得していたいくつかの名称を変更しなくて済むように)

最後の制約が地味に厳しく選定は難航しましたが、変わったBadものをいろいろ作ってるAssort、みたいなニュアンスを、簡単な単語で(シニカルに?)うまく表現できると思ったのでこれに決定しました。タグは #バドアソ で運用できています。いいね!

この名前に変えた影響は明確に現れていて、“Bad Assort”で直接Google検索してくれた人が圧倒的に増えました。今までは各作品名での検索にとどまっていたので、そういうサイトとして受け入れられ始めている、それが数字で明確に確認できるようになった、という意味で大きな変化です。検索をかけるためには対象のワードがさらっと出てこないといけませんから、覚えやすさと受け入れられやすさは格段に上昇したと言えます。

ちなみにBadとか言ってますがもちろん卑下する意図はなくて、自分ではかっこいいBadassと思っています。

なんてね。

今までの作品を見ている方であればなんとなく傾向は見えるかもしれませんが、こういったダブルミーニングは好物です。この傾向は今年の作品にも顕著に表れています。早速1作目から。

2025.2 “Periods of the Seasons”

  • 制作協力:Pheny Ø (BGM)

制作動機

2025年2月15日を持って10年にわたる長いサービス期間に終止符を打ったソシャゲ「メルクストーリア」、私もリリース直後ぐらいから4,5年遊んでいた大変思い出深い作品で、今でも当時遊んでいた人と結構親交があります。ストーリーの作り方はだいたいここから学びました。

サービス完結の報せを受けたのが昨年12月で、そこから何か作ろうと思い立ったので実質的な製作期間は1ヶ月~50日程度でした。

評価

目新しさは特に求めていなかったのですが結果的にかなり新しい遊び心地のものが作れて、アイデアそのものには満足しています。あとこれは個人的エゴですが、雰囲気を壊さないために点字とモールス信号に逃げなかったのはえらかったと思っています(どういうことか気になる人はぜひプレイしてみてください!)

BGMも急遽発注したにもかかわらず高クオリティで雰囲気にマッチしたものが返ってきたので素晴らしかったです。何より「元メルスト勢でそこそこ知っている人がたまたまDTMを当時からやってたのを知っていたし今も継続してやっていた」というのがラッキーすぎでしたね。

マイナス面としては、ストーリーは(特に原作未履修の人が多いという事情もあり)少しわかりにくくなってしまったかなと。今回は原作ありきなのでこの形での着地になりましたが、説明を削りすぎるとよくわからなくなってしまうのは事実です。

  • ◎プレイ感、独特な解き心地は多くの人に受け入れられた。
  • ◎難易度は適切だった。
  • ▲ストーリーを過度にぼかしすぎた。

総じてこの製作期間に対してはかなり頑張れたなと思っています。特に、設問が決まらないとイラストを描き始められないので、リリースぎりぎりの時期はかなり夜遅くまで頑張っていた記憶があります。

夜遅くと言えば、今年のエイプリルフールネタはそんな時間帯のあんなことやこんなことに焦点を当てた作品でしたね。

2025.4 “神楽ちゃんのパジャマパーティー!?”

  • 制作協力:こむぎっこ (ロゴデザイン)

制作動機

今年のエイプリルフール枠としてだいぶ前から内定していました。きっかけはアイデアメモにずっと前から書いてあったこの文。

もしカップラーメンの作り方が全部謎解き調で書かれていたら
(謎解きって回りくどい指示を嬉々として解く人の存在によって成り立ってるとこあるよね)

※原文ママ、黒塗りはネタバレのため反転して表示してください

ともすれば若干悪口ですらあるこのメモを、実際に作品として起こしたものです。

当サイトでは7段階の難易度表記で各作品の難易度を事前に公開していますが、誰でも解けるような★1の作品もちゃんと用意しておこう、というのもついでに意図としてあったりします。

評価

懇意にしているクリエイターさんにタイトルロゴを外注したのですが、ロゴがちゃんとしてるとSNSで広まる時にハッピーになるということがわかりました。

普通にみんなちゃんと「一杯食わされてて」よかったです。難易度は★1としてまあ適正なのかなと思いましたが、これでも思わぬところで詰まる人は詰まるようなので、まだまだ簡単に仕上げる余地はあったかなと思います。時事ネタではなく深夜にやれば誰でも引っかかるネタなのでエイプリルフール過ぎても旬が去らないのがポイントです(年中誰かの絶叫を見られますね!)。

ただ、今後もエイプリルフールネタをやるのかという点については疑問も残りました。Ad Nauseamに続いてまだ2回目なので、「毎年確実にエイプリルフールをやってくれる」と認知されているわけでもないでしょう。そもそもエイプリルフールは同様のコンセプトで小ネタ的に作品を出す団体・個人がとても多いので、そこにわざわざ被せる意義があるか、そうまでして作りたいものなのかは考えてやる必要があるなと思っています。ここまでの2作は作りたいコンセプトがたまたまエイプリルフールに嵌まるので出しましたが、「エイプリルフールだから何か出そう」という動機での制作、特に時間的に余裕がない中で十分なクオリティを確保できるかも怪しい状況では慎重になるべきだと思っています。。

  • ◎コンセプトはエイプリルフールネタとして想定通りに受け入れられた。
  • ◎難易度は適切だったが、もう少しやさしくする余地もあった。
  • ▲制作はエイプリルフールに引きずられすぎないように。必ず出さなければいけないものでもない。

ふざけるのは年一回で十分です。この次の作品では、一転してシリアスに寄せています。

2025.6 “記憶遺棄20A”

  • 制作協力:篠雲のの(友情出演)

エクストリーム話題作。これについては同時期の話題を大きくさらったので、覚えている方も多いかと思います。

制作動機

昨年末、家で暖房と電子レンジと湯沸かし器を全部同時に使ったときにブレーカーが落ちたのがきっかけで、「これがゲームの目的になっていたらちょっと面白いな……」と思い立ったのがそもそもの始まりです。

ちょうどその時興味を持っていた内容とも絡めて「人工知能の自己終了」というテーマに落とし込んだのがスタートです。謎解きの内容は後からついてきました。

このテーマで制作をするなら今までやってきた述べるゲーム形式より実際にその視点に立って体験してもらった方が面白いんじゃないかと思い、3Dでの制作に取り掛かりました。BlenderとかWebGLとかの勉強を始めたのはこの作品がきっかけなので、実は3D歴せいぜい2ヶ月ぐらい(平日社会人)の作品です。

本当は8月ぐらいのリリースを目指していたのですが、6月にとあるオフイベントがあったので、イベントで「最近これを作った人です」と言えると多少自己紹介が楽かなと思ってそれに間に合うように作りました。結果的にこれは名刺代わりとしてすごく役に立った(※主観)ので、制作者交流のオフイベがある方はそういうことも計算に入れて色々活動されるといいんじゃないかなと思います。実績ってだいじ。

※私は顔出しが嫌いなのでオフイベントはめちゃくちゃ苦手です。イベントそのものは収穫も多く良かったですが、遊んでる時にそれを作ってる裏方の顔を想像してほしくない。檻に入るので逆光で撮ってください。

評価

この件に関しては単独で記事を作成してるので、詳しくはそちらへ。

今作からは個人的にかなり多くの学びがあったので、来期以降に生かしていきたいと思っています。

↑で扱っていない内容として、一つ強く思ったことを挙げるなら……

VTuberってすごい。

多くの方々に配信していただいた本作ですが、私自身はこの作品で接点を持つまではVTuberとはほぼ無縁の生活を送ってきたので、その活動実態については実はよく知りませんでした。

でも皆さん本当に楽しそうに遊んでくださるので、すごいなと。正直VTuberをナメてたと言わざるを得ないレベルで。今では配信を作業用BGMにさせてもらうくらいの重度のリスナーです。

実は私自身は一度完成させた作品にはそれほど執着がなくて、かなり早い段階で冷めた目で見ては欠点を見つけて反省してしまうタチなので、こういうポジティブなフィードバックがその目で見られるというのはすごく嬉しいことなのでした。

2025.8-2025.10 サーバーダウン。長期復旧作業へ

今年を台無しにした、一番のやらかしです。これについては手短に。

一言でまとめるなら

「何もしてないのに壊れた」

です。

自前のサーバーは24時間体制で管理しきれない&セキュリティ対策を十全にできる自信がないためずっと外部のお世話になっているのですが、それが仇となった形です。

どう壊れたかについてはここでは言いませんが(年始にサイト移転したこととは全く無関係である、ということだけは言っておきます)、自動バックアップサービスまで使っていたにもかかわらず、それもろとも機能不全に陥ったので、自前のバックアップの必要性を強く感じました。

これを機に専用の外付けHDDを購入しました。今後はこのようなことはない……はずです。

↑他人事じゃないなと思ったら今すぐ買いましょう。私からの忠告です……。

2025.11 “Gothic:Neue”

  • 制作協力:京極みやび (BGM)

制作動機

オリジナル版のGothicをリリースしたのが2022年9月で、そこから3年という月日で自分個人としての技術力や、謎解きというジャンル、プレイする層に対する解像度というのが大きく上がった現在、同じことをもう一度しようと思ったらかなり違うものができるだろう、とずっと思っていました。

今年サイトを移転して様々な新機能を導入しましたが、Gothicのシステムだけは新サイトの機能に合わせるのに問題が生じていました。ありがたいことに今でも人気、反響とも十分なこのコンテンツをシステムアップデートから取り残してしまうのは考えになかったので、この機会に内容も一新してしまおう、ということでリニューアル版の作成に踏み切りました。

本当はリリースは9月の予定だったのですが、サイトが飛んだため遅らせました。

さらに本作は課金システムの運用試験も兼ねています。これについては後述します。

評価

リリース後特に重大な不具合もなく動いてくれたのは大きな評価点です(完全になかったとは言ってない)。新システムのテストも手間をかけただけあって、少なくとも今のところは問題なく動いてくれています。

そしてこれが確認できているということは、実際にこのシステムで売り上げが発生したということになります。今後様々な活用が見込めるので、うれしい結果です。あとはお金を払ってくれる方にそれに恥じないものを提供できるよう頑張らねば、という責任感もありますが……。

  • ◎コンセプトや難易度を維持しつつ、うまくリワークできた。
  • ◎課金システムはうまく動いている。売上の水準は予想以下だが想定範囲内。まだまだ初動なので、今後うまく活用したい。

2025.12 “ヤミノゲ”

  • 制作協力:鈴白くま (キャラクターチップ)

制作動機

実はこのゲームはこのサイトのために作ったゲームではなく、私が学生時代に友人と遊んでいたときに自然発生的に生まれたものです。ルールはその時のものから一切手を加えていません。

割と最近になってその友人と「また久々にあれやりたいね」という話をしたのですが、今の技術があればオンラインゲームとして作って遊べるのでは?と思って作ってしまいました。それをついでに全世界にそのまま何の説明もせずに公開したらどうなるだろうか、ということを思いつき、試しにテストプレイしてもらったら思いの外ウケてしまったので公開決定した、という流れです。

要するに、最初からこんな狂ったものは予定にありませんでした。

評価

最悪誰も遊ばなかったとしても身内で遊ぶあてがあるので、作るためのハードルは低かったです(笑)

リリースしてまだ間もないので評価はまだ保留しますが、本作はいくつかの理由においてかなり独特な作品なので、事後分析の材料としてはかなり興味深いです。「一人で気軽にプレイできない形態である」ということが及ぼす影響は注視したいなと思います。

キャラクターチップの作成をお願いした鈴白くま先生は密かに推しているイラストレーター(本業はハンドメイド作家さん)で、たまたま良いタイミングでご縁があったのでこの機会に依頼しました。いつかは何かあのかわいいイラストを使ってみたいとずっと思っていたのですが、こんなイカれた作品のために描いてもらうことになるとは……。

↑これだけのために描き下ろされているよ。なんということでしょう。激かわありがとうございます保存しました。

目新しいこととしては自力でオンラインボードゲームを実装することができたので、これ以降できることの幅がまた広がりました。特にBGAなどと違ってルールを伏せたまま全世界に公開するという芸当はこういうふざけたサイトでしかできないことなので、このフォーマットで何かやってみたいというボドゲ業界の皆様のご相談、お待ちしております。実装は全部やらせていただきます。

Q&Aコーナー

実は同じような質問が複数来ていたので、一番べた褒めされているやつを(笑)わーい!うれしい!ありがとうございます!

あ、もちろんクレジットにいる人の数は間違ってませんよ! アート面は外注することも増えてきましたが、根っこはいつでもだいたい私一人です。

でもやっぱりアイデアを出すにあたっては人数は多いに越したことはありませんよね。大学のサークルや団体で活動されている方がどうしているかは知りませんが、おそらくゼロから始めてアイデアを出し、それをまとめるスピードは段違いでしょう。個人の私が太刀打ちできるとは思えません。そもそもブレインストーミングって複数人でやるものですし。

私はこの人数の差を「過去の自分や未来の自分に助けを求める」ことでカバーしています。

平たく言えば「アイデア帳」で、これがアイデアの調達先です。ふとした瞬間の思い付きは、一旦メモして寝かせておきます。そうすると後日それを見た時に、他のひらめきと合わさってより良いものになるかもしれません。

ちなみにこのメモ、あんまり具体的過ぎてもよくないかなと個人的には思っていて、すごくいい加減に書いています。また「作品ができそう」レベルでなくても、単語レベルでちょっと面白いとかでもメモしてしまいます。どうせ忘れてしまうくらいなら、とにかく書き殴るのが大切です。

一見すると作風が毎回バラバラなのも、これでだいたい説明がつきます。違う時間の自分同士でブレインストーミングをしているわけですから、これは事実上別人と作戦会議をしているのとそう変わりません(少なくとも私は日によって結構面白さの感じ方に幅があるので、そうなります)。

来期の目標と予定

出し損ねたものを出す

ざっつ・しんぷる。

実は去年のレビューでは2025年リリース予定の作品を4つ挙げていました。このうち、Periods、パジャマパーティー、記憶遺棄20Aの3つは予定通りリリースできたのですが、残りの1つが今年中に間に合いませんでした(Gothic:Neueとヤミノゲは予定外リリースです)。

まずはそれに取り掛かりたいと思っています。Gothicや神佑に代表される長編タイプなので制作にはそれなりの時間を要するのですが、もうこれ以上先延ばしにするわけにもいかないので、まずはそれを完成させるのが一つの目標です。

誰かの手を借りることを躊躇わない

何かを作るにあたって、この部分にこの人の力を借りられたら自分一人でやるよりいいものができるだろうな、と思うことは多々あります。今年は結構そういう意味で色々な方の手をお借りしたわけですが、それは私自身の実績が積み上がってきたという部分によるところが大きいです。実績があると心理的に頼みやすくなりますし、(おそらく)頼まれる側もある程度安心して受けていただけるのではないかと思います。

※これ読んで思うところがある人へ:そう、そうなんですよ! だからまずは名刺代わりになる作品を作って公開することを強くお勧めします! どれくらいのクオリティのものが作れるかが可視化されているというのは、依頼する側される側双方にとって結構重要です!

また、記憶遺棄20Aで自分の作品を配信者の皆様に配信していただけるようになって初めて強く意識したことですが、私一人の広告活動というのはどうしても限界があります。作っている最中ももちろんですが、そういう宣伝などのアフターケア(?)の部分でも手を繋げる人がいると幸せになれそうです。

おわりに:手を止めるな

特に競合する誰かのことを意識して活動しているつもりはありませんが、強いて言うならやはり謎解きのそれだと思うので、そちらを例に挙げてこの話をしましょう。

どんなに美辞麗句を並べようが、謎解きは根本的に「ある程度頭が良くないと解けない」ものです。そして、それに携わっている人々というのは概して一般的な目線で見たときに「極めて頭が良い人々」です―私なんかよりもずっと。

そういう人たちに飲み込まれないようにしようと思ったら、取るべき道は2つです。真っ向勝負しなくて済むように違う方向を向くか、彼らより多くの時間を努力するかしかありません。

ましてや、今は生成AIの手を借りた創作活動というのが大変盛り上がっている時期でもあります。

私はアート面に関しては人の手で描かれた作品が好きですし、それに大きな価値を感じる人間なので、少なくとも何らかのきっかけで考えを変えるまではBad Assort名義で出す作品にそれらを使用することはないですが(これは単に好き嫌いの話であってAIの権利周りの云々とは一切無関係であるということもはっきり言っておきます)、生成AIの力を借りた方が制作は圧倒的に速く安上がり。これは紛れもない事実です。

私はどちらかと言えば違う方向を向くことでこの問題を解決してきているつもりですが、もし相手取らないといけない集団がいるとすれば、それはそういう速度感と物量で殴ってくるものです。

ですから、手を止めている暇などないのです。