今回ご紹介する「メルトダウン2020(Meltdown 2020, トリアージ)」。このゲームの存在に気が付いたのがどれくらい前かはもう忘れてしまいましたが、体感10年ぐらいずっとやってみたいと思っていたボードゲームでした。
その挑戦的なテーマから国内の取り扱いは絶望的、既に絶版で新品の供給はなく、海外オークションサイトを当たってもそうそう良品に出会えない……ということでほとんど忘れかかっていたのですが、この度ついに手にすることができたので、遊んでみたレビューを書きました。

特に本作の日本語レビューは今も昔も絶対数がないと思われ、貴重です。
◆■◆ 注意 ◆■◆
本作は原子力発電所、放射能をテーマにしたボードゲームです。
コンセプトを不快に思われる方は、以下読み進めずにブラウザバックしてください。
Contents
どんなゲーム?
原子炉のメルトダウンから取り残された人々を救おう。競争パズルゲーム。
- プレイ人数:2~5人(1人プレイ可の記載あるが説明書に説明がない)
- 対象年齢:8歳以上
- プレイ時間:40分
- 原作:Cwali
- 発表年:2011
デザイン:タイルのデザインはおそらく地図なのですが、線が合ってない……。この辺は海外のレビューサイトを見ていても割と低評価が目立ちます。
盛り上がり:これで盛り上がっても良いメンバーを揃えてください。
運要素:ただダイスの運次第な場面も多いです。
ルールの複雑さ:特殊な行動はなく、シンプルで誰でも理解できるでしょう。
その他:本作の初公開は2011年、ドイツのエッセンシュピールにて。

このページでは普段は購入できるサイトへのリンクを貼っているのですが、もう10年以上も前のゲームということもあり、基本的には中古を探すしかない状態です。国内在庫ともなるとほとんど見つけることができません。
相場はかなり高騰していますがたまにメルカリで出ていたりするので、どうしてもやってみたいという興味のある方は探してみてください。
私はeBayで空輸してもらいました。
おすすめポイント
移動力と輸送力の違う3つの乗り物で、人を安全地帯まで運び出そう
マップ上に散らばった人々を2つの空港に輸送して国を離れることで、あなたの色に属する人々(ミープル)をできるだけ多く救うのがゲームの目的です。
人々は自力で移動することができず、マップ上に3つ配置されている乗り物に頼ることになります。移動に使える乗り物は3種類。

ミニバンは1回の移動で2マスしか動けませんが、同時に4人を運ぶことができます。
同じ要領で自家用車は移動3マス、定員3人。
一番速いヘリコプターは4マス動けますが、2人しか乗れません。
サブタイトルに込められた意味
このゲーム、またの名を「トリアージ」と言います(箱には書いてありませんが、発売当初の情報です)。
ゲーム中、1行動ごとにダイスを振ります。出た目と同じ番号の原子炉は事故を起こし、今後ダメージ源となってしまいます(これは一定回数ごとに修復のチャンスもあります)。

一定回数行動すると、原子炉を中心として半径1マス内にあるミープルはダメージを受けます。(コマを横倒しにすることで表現します)

さらに、同じ原子炉が自己を何度も起こして被害が拡大していくと、ダメージはより遠くまで、また近くにいればいるほど大きな被害を受けるようになります。これは乗り物で輸送中の人たちも例外ではありません。

助けられそうな人が目の前にいる。次にその原子炉が事故を起こすと乗り物に乗った他の人もまとめて失われてしまう……危険を冒してでも拾いに行くべきか?
時には絶望的な状況で最初から救出を諦めざるを得ないこともあるでしょう。
このゲームのジレンマであり、ある種醍醐味です。
道徳的教訓
ルール上の定義で、あなたが助け出せるのは自分の色のコマだけです。何らかの理由で他の色のコマは無視することになっており、動かすこともできず容赦なく見殺しにしていきます。助けた人数と健康度が最終的なスコアになる競争ゲームとしての在り方はそれで良いのかもしれません。
このような指摘があります。
もし全てのプレイヤーが色の垣根を超えて全てのコマを助けるように動いた場合(また、ルールもそのように変更した場合)、ボード上の全コマを救出するのはあまりにも簡単です。
制作側がこれを意図していたかどうかはわかりませんが、これが何を意味するのかは一度考えてみるといいかもしれません。
今、何を祈った?【閲覧注意】
冷静にゲームに勝つことだけを考えて盤面を見たとしましょう。
自分の色は危険地域にいる人を助けられない。他の色は近くに乗り物があるので、それを走らせれば間に合いそう。ただし、5番の原子炉がこれ以上被害を拡大させなければ。
そんな時、命運を託すダイスを振りながら、こんなことを思うのです。
いっそ5番ふっとばねえかな ※実話です
ボドゲはボドゲ、現実は現実と割り切って遊べる人向けです。特に国内で遊ぶ以上は、メンバー集めには気を遣ってあげてください。
総評 - 見た目より頭を使わない。良くも悪くも単純
日本ではもう明らかに商業ベースに乗せられないテーマの作品ですが、メカニズム自体は上手くできており、深く考えずとも気軽に遊べるゲームに仕上がっています。

一方で、行動にバリエーションがないことからかなり単調であることは否めません。だいたい最適な動きが明白である場面が多く、自分の色を出してプレイするという類のゲームではないので、そこに楽しさを求めているタイプの人にとっては少し退屈かも。
テーマを変えてリメイクすれば結構面白いものができそうにも見えるんですが……制作者の皆様、どうでしょうか?