記憶遺棄20A 製作後記 – 個人製作ゲームを4桁RPしてもらった日

あなたにとっての何気ない一週間は、私にとっての天変地異でした。

謎解きというジャンル、それも特にWeb謎というニッチなジャンルにおいて、ただの告知ポストでこのようなバズりを記録するのは非常に珍しいことで、少なくとも私の知る限りでは例がありません(バズったと自己申告するのはやや気が引けますが、さすがに記事公開時点で25万回表示はそう言ってしまっても差し支えないでしょう)。

書き残しておく必要があると思いました。書いておかないとそのうち忘れてしまうでしょうし、今回経験したことは重要だと思うからです。私自身ここから何かを学び取る必要がありますし、ほかの誰かが重要な学びを見つけてくれるかもしれません。

りめんばーあす。(マリアナ海溝から回収された文書)

※残念ながら私は真面目な文章を真面目に書ききる力がないので、これ以降も要所要所でふざけます。ご了承ください。

実際に起こったこと

作品公開1週間前、金曜日の夜。本業会社員の私は平日の労働から解放され、謎解き制作者が集まるdiscordコミュニティで他愛もない雑談をしながら、告知用の画像を仕上げているところでした。

個人制作者にとってはまず作品を知ってもらわないと話にならないので、事前に知ってもらうための告知ポストは生命線。広まれば広まるほど良いものです(この時点ではまだそう思っていました)。そうなると誰もが気を遣いたくなるのはポストする時間。

Q. 結局何曜日の何時にポストするのが一番いいんですかね?

A. 21時だと思ってる、それくらいの時間って結構SNS見てない?

というかる~い会話があり、じゃあ土曜日の21時頃にしますね~、ということでその日はおしまい。

いいね数で見る、問題のポストの加速度

※この項はあったことをつらつらと書いているだけで、分析とかじゃなく壁打ちに近い内容なので全編すっ飛ばしてもらっても構いません。

投稿当日 20:20頃(投稿直後)

予約投稿すると画質が落ちるので主導で投稿することにしているのですが、夕飯の時間との兼ね合いもありややフライング気味に投稿。いいね数2桁ぐらい。いつも通り、というかこれでも十分です。いつもリポストしてくれる皆様、ありがとうございます。大変助かってます。

とりあえず一仕事終えた、ということでパソコンからは顔を上げ、ねこを構い倒しに行く。

21:20頃

早々にいいね数が100の大台に乗ります。Web謎で告知を打っただけでこんなに反響があるのは既に結構すごいので(数感覚としては一枚謎以外の謎解き関連コンテンツは大抵皆こんなもんだと思いますが)、おお、なんか想定以上に上手くいってるじゃん、という気持ちに。
これくらいの数だと、ああ、この方はいつも見てくれてるなー、とか確認したりしてます。

23:00頃

風呂入ったり台所片づけたりしてる間にリポスト数100を超え、400いいねぐらい。この辺りから明らかに完全FF外でポスト拡散の流れができ始めていました。

こうなると完全に自分が制御できない範囲です。もう一度TLの上に乗っけるために自分のポストをセルフリポストすることがあると思いますが、もう自分のTLの外の動きによるところが大きすぎて自分のTLに上げなおす意味が相対的に薄れている状態です。
あとは引用RPで全くのFF外の方から面白そう、やってみたい、などのコメントが見られるようになってきたのもこの辺りから。

0:00頃

700いいねぐらい。Xのポストの表示アルゴリズムとして投稿してから6時間が経過したポストは大きくスコアが落ちるということが知られている(ちょっと前の情報なので今もそうかは知りませんが)ので、まあ夜の間に落ち着いて、1,000いいね超えるぐらいで着地するのかな、と思いました。

4桁か~、快挙だな~、なんて他人事のように思いつつ、ここ最近ずっと制作作業が追い込んでいたので、今日はゆっくりしようということで早々に就寝。

翌日(日曜日) 

この日は制作作業が落ち着いたのでフリーな一日にできる、掃除とか買い物とか読書とかしたいこといろいろしよう、宣伝ポストも落ち着いて準備はばっちり、清々しい一日――のつもりだったのですが。昼頃の時点でたしか1,500いいねぐらいあった気がする。夜中の誰も起きてないであろうダウンタイムも考慮に入れると、なんか加速してね???まだ日曜午前ぞ???

もうここまで来るとXが通知をサボり始めます(体感ですが数件まとめて通知を寄越すようになります)ので、この辺からはもう誰がいいねしたとかよくわかってません。追いきれない。

この辺りから明確に心境に変化が出てきていて、「たくさん遊んでもらえそうだなー、うれしいな」を完全に通り過ぎ、「母数がでかすぎる。本番で不具合出したらどうしよう。クオリティは大丈夫だろうか。」という不安が支配し始めます。

↑当時の心境

先週の時点で複数人のデバッガーに最終調整を頼んでクリアはしていたのですが、この告知ポストの異常な伸び方のせいで狭い界隈としてはあまりにも大袈裟なことになってしまい、「本番で絶対に失敗できなくなってしまった」という理由で急遽デバッガーチーム(別にチームではないですがここではそう呼びましょう)を再度招集、再デバッグすることを決めます。

幸いなことにデバッガー各位もそのポストの動向は確認していて、「これはただ事ではないな(他人事)」と感じていたらしく、快諾していただけました。急な話だったのに本当に感謝しかないです……。

月曜日

2,000いいねを突破。

このあたりから、配信利用に関する問い合わせがDM、メールを問わずぽつぽつと来るようになります。

ところで、私の平日のスケジュールはだいたいこんな感じです。

出勤(フル出社)
19:00~20:30ぐらい帰宅(電車なのでメールは多少見られる)
食事(作る)、風呂、ねこのお世話などなど
22:00~フリータイム(創作に使える時間はここから捻出する)
0:30±1時間就寝

うん、これって本業の傍ら一日数時間の作業の積み重ねでできてるんですよ。なんならストレス解消にApex Legendsとかやってる時間も含んでますからね、すごくね?

真面目なメールに対応できる時間は限られています。まさか本業中にそんなことするわけにもいかないですし、日々のフリータイムを削るしかありません。本来であれば今週はずっとのんびり過ごすつもりだったのに、デバッグ後の微修正とかメール対応とかが降ってきた結果、特にいつもと変わりない忙しさの(ただし心労はいつもの比ではない)作業日という感じでした。

とはいえ週末は過ぎたので、ポストの拡散も少しは落ち着くはずです。

火曜日

配信利用の問い合わせ対応中に、ふとした疑問が浮かびます。

普通、配信では他のVTの名前を出さないように、というルールがあることが多いですよね。

今回友情出演しているVTがいるけど、大丈夫なのか……!?

私はそんなにVTを追いかける方ではないので界隈の因習には詳しくないのですが、これやばいかもしれない、と思って念のため多方面に問い合わせを入れたのがちょうどこの日。

配信慣れてないのがこんなところで裏目に、というかそんなこと想定しとらんし、という一件でした。幸い特に問題にはならなかったので、今後も機会があればこういうプチコラボみたいなのはやってみたいなと思っています。出演希望の方はおといあわs

水曜日

3,000いいね突破。

ポストそのものの伸びはやっと落ち着いてきたものの、問い合わせの対応という意味ではこの日が一番忙しく、一日を通してたくさんのメールをいただきました。風呂入って上がったら新規問い合わせメール3件増えてたのがなかなかのすごエピソード。

最終デバッグと、メール対応と、サーバーのメンテナンスをしてました。なんかどれもこれも1人/日ぶんぐらいの作業量がありそうですが、私は一人しかいないので当然のキャパオーバーです。それでも公開日を延期しないのであれば私がやるしかなかったので、遅い時間までパソコンと向き合っていました。

もう誰かに八つ当たりしたくなるような心境でしたが、あくまで自分に言い聞かせていました。

私にとっての天変地異の一週間は、他の誰かにとって何の変哲もない一週間です。

自分にどんな事情があって忙しくしていようが、他の誰にも関係がない。世界はいつも通り回っている。そう考えることで毎日平静を保っていましたし、今後この活動がどう転ぼうとも、それくらいの平常心を忘れずに、と思っています。

木曜日

やっと例のポストの動きが(ほぼ)完全に止まりました。これ以降も配信許可に関する問い合わせなどは断続的に来ている状態ではありましたが、少なくともフル稼働してまで対応しなければならないレベルではなくなっていたので一安心といったところです。

明確な要因はあったのか?

繰り返しになりますが、大事なのはこの経験から学ぶこと。ただ喜んだり驚いたりしているだけでは次につながらないので、当事者として感じたこと、そこからわかることを振り返ってみようと思います。

面白「そう」だから広まるとき、中身は(まだ)関係ない

今回伸びたポストはただの告知にすぎません。まだ誰もその中身を見たことがなく、下手をすれば誰が作っているかもよくわからない中で、たった一枚の画像+140文字だけでここまでポストを拡散できるということ自体が既にひとつの気付きと言えます。

世の中の見ず知らずの人間たちは、あなたが何をしているかには興味なんてないのです。私が興味のありそうなことをこいつが持ってきたぞ、という動機でリポストしてます。たぶん。

ここから導かれることは月並みですが、多くの人に「自分のことかもしれない」と思わせるようなことを書く、ということでしょう。

タイトルのインパクト

今作のタイトルの名付けに関しては、ああでもないこうでもないと結構な遠回りをしました。最終的な着地点が「記憶遺棄20A」であったことは、告知が拡散したことと決して無関係ではなかったと思います。

だってなんかもう字面が面白そうじゃないですか最終的にこの名前を選んだ大きな理由のひとつが、これがかなり想像力に働きかける名前だということです。絶妙に「仄怖い」ですよね(これは今作った造語です)。ほんのちょっと具体性があって、そこはかとなく不安を掻き立てる言葉が強い、と考えたのです。

何も類推できない洒落ただけの単語では、不特定多数にアピールするという意味では無力です。

まあそれは私もよくやってることなんですけどね。

キャッチコピーの作り方

告知用画像にはこんな風にキャッチコピーを入れました。

そんなこと言われたら返す刀で「え、それで出られないの?」ですよね(まあこの疑問はおそらく想定されていない形で回答されてしまうわけですが)。

この前の項目でも話したことですが、このセンテンスには具体性があり、続く疑問が浮かびます。

一方で、もし「扉が開いているのに、謎のロープで繋がれていて出られない」などと書いてしまうとどうでしょう? 「そりゃ出られないよね」となりますよね? 「切るか何かするんだろうな」と思えば、大して興味を惹かれないと感じませんか?

最後まで書ききらないことで、その次を考えさせることができるというわけです。この適度な具体性こそが立ち止まらせるための鍵になるのだと思います。

さらに、ポストには「一周回ってリアル脱出ゲームでは絶対にできない体験」と書きました。これもかなり気になるワードですよね。

元々ブラウザゲームとして発展してきた脱出ゲームというのを、現実世界に持ち込んだのがリアル脱出ゲーム。当時は目新しさという話題性があったと思います。今ではいろいろな法人、団体がリアル脱出ゲームを制作、発表していますから、もうかなり一般に浸透したはず。そこを逆手にとってこう言われたら、まあ気になるのが人の心情かなと思います。

誇大広告?

もちろん上記は実際にプレイされた方はお分かりのようにいずれも事実ですが、かなり工夫して書き起こしています。履歴書と一緒で嘘は書けませんが、話を盛るのは自由です。ただし誇大広告と思われると白けてしまうので(これも結構スレスレのラインを行っているのですが)、何事もほどほどに……。

正直ChatGPT云々の部分にはちょっと誤算があって、私はこれを言われてもそんなに期待しないんですよね。なんかこれ読んで期待してスカされたみたいなコメントがあったんですけど(でもすいません多分その感想を持つということはもうNot for youなんですが)、AIってそんなに訴求力高い??? と思ってました。

作る側が意図している魅力で語ってはいけない

上では堂々とそう書きましたが、実のところ、本作は最初から「ドアが開いているところからスタートする脱出ゲーム」を作ったら面白そうだとか、「リアル脱出ゲームではできないようなことをさせる脱出ゲーム」を作ったらウケるだろうとか、そういったことを考えて作ったものではありませんでした。

この作品で私が面白いポイントだと思っていたこと(ひいては、本作を作ったきっかけ)は全然違う部分にあるのですが、それは多くの人にとっては魅力として感じづらいことだろうということも薄々理解していました。メタ認知です。(私メタ認知できてま~す、なんて宣言すること自体自己否定も甚だしいと思っているので、あまり声高に主張する気もありませんが……)。

ここからが、おそらく制作する側の人間にとっては非常に難しいことだと思います。

「自分はこういうことを面白いと思っている。それを皆にも知ってもらい、共感してもらいたい」。この目的のため、私は自分が感じている魅力でこの作品を広めようとするのをやめることにしました。自分のこだわりをいったん捨てて、狭く深い魅力を理解してくれる人に届けるために、広く浅いコンセプトで広めることを先決としたのです。

ターゲティングしている層と実際に広めたい層の考え方は違う

理屈はこうです――もともと尖った作品で、本当に理解してハマってくれる人間はそう多くはない。ただでさえ母数の足りない層に向かってアピールしても、その数は知れている。だったらまずは母数を広げに行こう、ということです。そうすれば、広く知れ渡ったその中にいるかもしれない「自分のやっていることをとても気に入ってくれる人」に、存在を見つけてもらいやすくなります。デザイン論でよく言われる「知られないのは存在しないのと同じ」という格言を地で行く戦略です。

それをやるためには、狙いをつける層を再構成しなくてはいけません。それは自分が面白いと思っていることとは関係のない枠組みになるわけですから、おそらく普段の自分の発想ではたどり着けない考え方をしていることでしょう。確かにこれは「謎解きゲーム」として作った作品ですし、普段こういった作品を宣伝するにあたっては「謎解きをやる人向けに広まればいいな」と思って宣伝しようと考えがちですが、その実態は単なる謎解きとはかなりかけ離れています。そこで、自分の立ち位置を「謎解き」という狭い概念から、より広く「ブラウザゲーム」に再定義しました。まずこの発想にたどり着くかどうかが最大の壁です。

先ほども書きましたが、明らかに自分とつながりのない層でポスト拡散の流れができていた、というのが特筆すべき効果です。普段リーチできない層に届けることができたし、興味を持ってもらえた(アンケートの結果から見るに、そういった層にも確かに自分のやっていることに共感してくれそうな方が多数見受けられたようです)。これを「リポストされるかされないかは時の運だ」と一言で片付けてしまうのは簡単ですが、そもそもそういう層に届けようという意思があるかどうかは全くの別問題です。

批評の受け止め方

さて、そうやって自分の身を切りつけながら最初にして最大の壁を乗り越えると、その次の壁はもっと具体的に心理的なダメージを与えてきます。それは「刺さるはずのない人にまでまとめて作品を届けているので、多くの批評に身が曝されることになる」ということです。わかっていたことですし身構えていましたが、事実、結構容赦のない批評が書かれたアンケートも何件か頂戴しました。直視するとまあ凹みはしますね。あら!わたくし、ブチ切れますわよ

これを読んでいるあなたの気持ちはわかる気がします。だって、数年前の自分がそうでしたから――そんなのはごめんだ、と思ってませんか?

でも冷静に考えてみてください。元々あなただって、結構尖った創作をしてる自信があるのではないですか? 「自分のことが本当に好きな人にだけ見てもらえればいい」と思ってたんですよね? 自分のしていることに自信があるのなら、批判的なコメントなんて、「ああ、単にそれは Not for you だったのね」、と考えるのが自然じゃないですか?

私は鋼の心を持っているわけではないので、批評には人並みにダメージを受けています。ですがこれが明らかに間違っているとも思いません。事実が、結果が、私にしか理解りえない形でそれを証明していますから。

あとね、本当に心理的助けを必要としているときは、評点7以上を付けてくれた人だけのフィルターをかけてアンケートを読めばいいんです。幸せになれます。

作品の内容について(ネタバレ含)

謎解き脱出ゲームと銘打って出してはいますが、(なんか毎回似たようなことを言っている気がしますが)これって謎解き脱出ゲームと言ってしまっていいのか? という疑問は当然持っていました。毎回周りの人間に聞くたびに「いや大丈夫だろ」「何を心配してるんだお前は」とは言われるのですが、それを期待して開いた人をがっかりさせるのはやはり本意ではないので。

ゲーム全体に占める謎解きの部分は正直少ないですし、あまつさえ脱出してねーじゃん、と言われてしまうとぐうの音も出ないですからね。開き直って「私がジャンルです」と言い放てればどれほど良いか。そろそろ言おうかな。だめ?

難易度

アンケートで特に難しいという意見が多かったのは、鏡像とネットワーズの部分です。配信でも結構ここで止まっている方は多かったですが、なんだかんだ自力で解けているように見受けられました。

ネットワーズに関する言い訳と暴論

ネットワーズはSCRAPの謎図鑑にも載っているので、今や謎解きとしては基礎知識レベルの扱いのようです。有識者に言わせれば「3×3で4文字の単語が中に入っていたらまず検討すべき」というレベルらしく、デバッグでは5秒で解かれました。最強かよ。

あとかつて「謎解き王トーナメント2016」のFINALでネットワーズを利用した謎解きがあり、当時はまだネットワーズという概念が一般的ではなかった中であれをノーヒントで解いた経験があったので、まあヒントなしでもいけるっしょ、という軽い気持ちでやりました。

ただ、謎解きマニア向けに作っているわけではない作品でそういうことをしてしまうと自己矛盾になってしまう、ということには後から気が付きました。もうちょっと手心を加えてもよかったかもしれません。

謎解きの鍵をプレイヤーの想像力に頼るのは危険か?

ドアが閉まる音でNo.6のロックが解除される部分もアンケートでいくつか「こんなんわかんねーよ」というコメントがあった部分です。

ここの捉え方は大きく3パターンあると思います。

  • 全てを理解したうえでドアを閉めたパターン
  • たまたまドアを閉めた時にNo.6がアンロックされたことで何が起きていたかを理解したパターン
  • 何も気が付かずにドアを閉めたしNo.6の変化にも気が付かなかったパターン

……あると思います、って書きましたが、まさか作ってる最中に想定していたわけはないです。実際にプレイされてみて、こんなことがあるのか、とわかったというのが実情です。なんでデバッガーはみんなここを理解度高く通過してしまったんだ。

別に後からでも納得してもらえるならそれはそれで良くて、問題は「秘密の質問があるのにそれを無視して音で解除するというのが結びつかない云々」という旨のコメントが……。

「なんで本題とは関係のない秘密の質問が用意されているのか」とか「なんで音でアンロックできるのか」とかを予め理解していないと、たしかにこの部分はモヤっとくるのかもしれません。そしてそれはある程度プレイヤーの想像力に頼らなければなりません。

これはもう私の制作思想なので誰からもとやかく言われる謂れはないと思っていますが、こういった手法は絶対に直さないし譲れない部分です。ほとんどの方は理解できていましたし、これによって取りこぼす層をケアする必要はありません。もとより『謎解き』を作っているつもりはないので……。

ただ逆に私以外の制作者の方でここを気にするタイプの制作をしている場合は、こういう「うっかり解けてしまう謎」には気を付けた方がよさそうですね。

同じことでも視点が変われば良くも悪くも評価されうる

さて、本作のアンケートですが、いいところも悪いところもたくさん書いていただきました。総合的には好意的なご意見の方がはるかに多かったので嬉しい限りですが、中には耳の痛い意見もありました。

これだけアンケートの回答件数が稼げると、今まで見えてこなかったものが見えてきます。興味深いのは、全く同じ点について肯定的な意見と否定的な意見が見られたということです。

皆が一様に「Aはよかったけど、Bはイマイチだった」と書いているなら、次回はBを改善しよう、となるのですが、「Aがよかった」と書いている人と「Aがダメだった」と書いている人が同様に存在している状態だと、それを直すべきなのかどうかがまずハッキリしません。

それを直す明確な理由がない場合は、今自分の作品を好きでいてくれている人のために直さない、が正解になると思います。否定的な意見を書いている人に合わせて変更を入れたら、もともと肯定的な意見を持っていた人に刺さらなくなるかもしれないわけで、そもそも一度否定的な意見を持った人がそんなことでわざわざ戻ってくるとも思えませんから、自分のことを好きでいてくれる人を大切にするのが幸せな解決策なんじゃないかなと。

思い返してみれば、今回指摘されたことと同じような傾向は過去の作品でもありました。でも私はそれがいいと思ってやっているところがあるので、今後もそのスタンスを変えるつもりはありません。

でも、3Dはしばらくやらないでおこうと思います

まだ3Dレンダリングには不十分な性能のPCも多数現役である、ということがはっきりしました。

あとは、3D酔いする人が一定数いる、ってことを全く気にしていませんでした(ごめんなさい)。そういう人はそもそも完走できないので当然アンケートからはわからない話で、後日何人かから実際にそういう理由でプレイできてないんです~、というコメントをいただいて初めて気が付いたという流れです。健常者バイアス……気付けただけ幸運だったかもしれませんね。

正直実装が大変だし、モバイル対応の工数が増えるし、ブラウザの制限も厳しくしてしまう一方なので、しばらくは3D作品はやめておこうと思います。元々実験的でこれ1作以外に同様のものを出す予定はありませんでしたし、まあ妥当なんじゃないかなと。

総括 – 成功、でいいんじゃない?

短期間での制作、想定以上の反響と不安定要素が重なったことで一時は本当にどうなることかと思いましたが、総じて今作は「成功」と言って差し支えない形で着地できたことに、まずは感謝したいと思います。今作を通じて新しい出会いもたくさんありましたし、ありがたいことに一部の配信では「話題作」とまで看板を付けていただいて、長くやっていればこういうこともあるものだなあ、と他人事のように思っています。

なんかだいぶ前にこんなことを喚き散らした気もしますが、記憶遺棄20Aの公開からわずか1日でプレイ人数1000人をしっかり達成しました(アクセス数から判断するに、未登録プレイを含めると多分もっと)。こういうことの積み重ねが、少しずつ前に進んでいるのが実感できる瞬間です。

あ、そうそう、もうクリアされた方へ: ありがとうございました。クリア後、もう一度ゲーム開始してみましたか? 開発中の私が便宜上「ブチギレ画面」と呼んでいたやつ、ぜひ見といてほしいです。